認知症の記憶が呼び覚まされる瞬間。「お墓参り」を実現して気づいたこと。

私の働く施設では、利用者様の誕生日に「ご本人の希望を叶えよう」というコンセプトの企画を行っています。

先日、ある利用者様の「亡くなった主人のお墓参りに行きたい」という願いを叶えるため、ご家族と一緒に外出をサポートさせていただきました。

目的地に着くまでの「不穏」

出発前、そして移動中の車内では、その方は少し「不穏」な状態にありました。 認知症の影響もあり、自分が今どこに向かっているのか、これから何が起きるのかという不安が、落ち着かない言動として表れていたのだと思います。

支えるスタッフとしても、「このままお墓についても、ご本人の負担にならないだろうか?」という緊張感が少しだけありました。

お墓の前で起きた、穏やかな変化

しかし、目的地のお墓に到着した瞬間、驚くような変化が起きました。

それまでの不安げな表情がすっと消え、穏やかな表情になられたのです。ご主人の前で手を合わせると、あんなに混乱していたのが嘘のように、ご主人とお墓に来た時のことをポツリポツリと語り始められました。

「場所」が持つ力、そして心の一番深いところに刻まれている「大切な人との記憶」の強さを、肌で感じた瞬間でした。

ケアとは「その人の人生」に触れること

帰りは近くの喫茶店に立ち寄り、みんなでケーキをいただきました。 機嫌よくケーキを頬張るその笑顔は、不安の中にいた出発前とは別人のように輝いていました。

ケアの仕事は、日々の生活の援助だけではありません。 その人が歩んできた人生、大切にしている思い出、そして「今、何をしたいか」という心の声に耳を傾け、形にしていく。

それこそが、認知症ケアにおいて最も大切で、最もやりがいのある瞬間かもしれないと感じました。

ご本人とご家族の笑顔に、私自身の心も温かくなった一日でした。 これからも、一人ひとりの「物語」に寄り添っていきたいと思います。

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